さ み だ れ 雑 記 | 76 | 2007年3月10日 |
捨てる(3)NEC PC-9801 BX/U2, BX3/U2, PC-9821
Xa10/K8
上がPC-9801 BX/U2 1993年1月発売 定価218,000円。当時としては低価格機です。
1993年1月は、日本語版Windows3.1はまだ発売されず、DOS全盛時代です。(3.1は同年5月18日発売。ちなみにWindows3.0は1991年1月23日だそうです)
しかし、低価格なDOS/V機はすでに登場し、それとの価格競争はすでに始まっているというそういう時代です。低価格機で定価218,000円ですか・・・。
これは、IBMのPS/Vを貰った同僚からの貰い物です。
「あげようか?」「う〜ん貰っても、別に使い道ないんだけど」「中古で買ったけど、98はよう分からんし、邪魔なんで引き取ってくれん?」「ま〜、捨てるんなら貰おうか・・・」
そんな会話があったと記憶しております。美品です。
下がPC-9801 BX3/U2 1995年1月発売 定価98,000円。これも当時の低価格機。意識的に10万を切ることを念頭に設計されたんだと思います。2000年7月ハードオフで1,000円で購入。「さみだれ雑記60 レガシーな日々(5)PC-9801BX3」でとりあげたマシンです。
BXからBXの3、ちょうど2年の差です。似たようなデザインです。まあ、このデザインは最後の98まで続きました。(中央のラインが左で上へ曲がっていく・・・そのデザイン)
デザインは似ていますが、激変しています。
まず、フロッピィの挿入口のデザインを見てください。上は3.5インチですが、5インチ版も発売していたなということが分かるデザインです。下のマシンにはもう5インチ版は発売されていないということが分かるデザインです。(5インチ版を作るには、電源スイッチが邪魔して構造上無理っぽいです)
ちょうど私がパソコンを買ったころ、たしか中古ソフト屋で、高校生か大学生かと思われる男二人組みがおしゃべりしているのを聞きました。
「もう5インチマシン売ってなかったりするなあ。俺5インチのフロッピィ200枚以上あるんだ・・・・」
200枚だったか100枚だったか300枚だったかは忘れましたが、「そりゃ困るだろうなあ」と思いました。
会社にある98は5インチ、自分で買った98は3.5インチでしたね。会社の98には外付けの3.5インチFDドライブが取り付けてありました。
当時はまだCD-Rは出ていないか、出ていても大変高価な時代で、大量保存といえばMOでした。もうMOの話はとんと聞きませんね。外部保存媒体の変転も激しいですね〜。他にもマウスが違います。上のBXの下のくぼみ、一番右の正方形のスイッチが電源、ずっと左にいって長方形のスイッチがリセット、その隣の覆いのある空間は・・・・・。これはマウスなんです。(その左がキーボード)
なぜ、マウスの差し込み口に蓋がしてあるのか・・・・・・・。
なぜなら、BXはDOSマシーンだから。
DOSそのものは、(DOSSHELLを除いて)マウスは使いません。DOS上で動くアプリの中に、マウスを使うアプリもありますよ。ということです。キーボードは必ず使うので別に蓋なんかついていません。マウスは使わない人もいらっしゃるのでデザイン的に蓋をつけておこう、ということなんです。そういった時代でした・・・・・。
マウスを挿したらこんな感じ・・・って・・・旧型マウス端子に新型マウスをつなげるアダプターを挿したものです。これはたしかPC-98用のマウスを買ったらおまけで付属していたんだと思います。
それと、当然のごとく、上のマシンにはCD-ROMは内臓できません。下のマシン。FDの下、少し色の白い四角の蓋。これは元々の持ち主がこの蓋を外して、CD-ROMを内臓させていたのです。どこかで眠っていた蓋はその分変色していません。
コスト削減が至上命題だったのでしょう。
PC-9801のボードの規格はCバスというのですが、その使わないCバスの覆い。上のは立派です。本体と同じ色にコーティングまでしてもらっています。ネジも手で外せるし。
パソコンが高いのは当たり前、ちまちまケチったとことで高が知れているという時代の名残りでしょう。
パソコンの覆いを止めるネジにしても、上は立派なネジを惜しみなく投入。下は安物のネジをけちりけちり投入。プリンタの端子の形状も変わっているんですが、これはコスト削減とは直接の関係はないでしょう。が・・それでも上のマシンのは(一番右の端子ですが)ひっこ抜けないように留め金つきですね。昔のマシンはしっかりしている。前回のIBMでもそうでしたが、ネジも立派なのを使っているし、ここまで強固にしなくてもという筐体でした。(昔のマシンは持ち上げるとずっしりと重い)
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そろそろ分解しましょう。
まずはBX/U2.
左端はHDです。この取付金具は、会社の同僚が買ったんだと思います。この取り付け金具も、結構なお値段が当時したと思います。たしか、それでノート用の3.5インチHDを小細工して取り付けていたと記憶しています。(3.5インチHDをカートリッジに入れ、5インチベイを利用して取替えが出来るキットを使ってました。う〜説明下手ですいません。分かる人にしか分からない表現だなあ)
Cバスに入っているEMSと書いてあるボードは・・・・・・・メモリです!
これだけでかくて・・・2メガ。
とくに何も設定しなくても認識されたと思いますが、設定の回転スイッチやジャンパーまであります。これは私がハードオフのジャンクで入手したんだと思います。
あ、当然のことながら、マザーボードにはメモリは挿せません。挿すとこないです。
HDDを外し、電源を外し、Cバス用のライザーもとっぱらいました。
ね、ボードにはどこにもメモリ挿すとこないんです。でもまあ、メモリ1.6Mはオンボードですから、普通にDOSを使う分にはメモリ不足は心配ないでしょう。(JustSystemのJustWindowとかを使うのは無理かな?もう忘れてますが・・・。JustWindowとはDOS版の一太郎・花子・三四郎にファイル管理を付け加えてWindowsみたいな操作性を付加したという、ま〜一太郎全盛時代のお話ですなあ。・・・・ちょっと目が遠くを見ていたりして。。。。)
解体終了。それにしても美品です。元々の持ち主にも、会社の同僚にも、私にも愛用されなかったということですから、パソコンとしては心残りかな。
CPUはi486 SX 22MHz。基盤に直付け。ファンはもちろんヒートシンクもなしです。そのCPUの左には
CPUを取り付けるソケットがついています。ここにi486DXを挿してもいいし、コプロセッサを挿してもいいという設計です。
コプロセッサというのは・・・・・・話ややっこしいです。Intel i486のDXとSXとの違いは、浮動小数点演算ユニットがあるかないかでした。DXはついています。SXはついていません。DXは高いです。SXは安いです。
SXを使っている人がやっぱり、浮動小数点演算ユニットも欲しいと思ったら、浮動小数点演算用のコプロセッサというのをIntelが販売していて、それを挿すこともできる、ということです。ところが・・ここで話がこんがらがるのですが、実はDXもSXも浮動小数点演算ユニットは内臓されている。しかし、DXを高級品として高く売り、SXを廉価版として安く売るために、わざわざ浮動小数点ユニットを無効にしたヴァージョンをつくりSXと呼んで安く売る。その場合、浮動小数点演算機能を追加するコプロセッサというものも、実は構造的にはDXと同じもので、その小数点演算ユニット部分だけを有効にしたものである。
お分かりいただけましたか?つまり同じ1つのものから、「フルヴァージョンの高いDX」、「浮動小数点演算を無効にした廉価版のSX」、「浮動小数点演算ユニットに特化したコプロセッサ」と3種類の製品を作りだした。と、そういうお話だったそうです。(うろ覚えの部分があるので不正確かもしれませんが、本筋は間違っていないと思います、です、はい)
(Intelは後にPentiumとCeleronで同じことやりますね。高いPentium、構造的にはPentiumと同じだが、機能を無効にして安くしたCeleron)
前回のIBMで取り出したDXを乗っけてみました。
これ電源ユニットです。ちょっと気になったんで分解しました。
あれ、なんか愛らしいじゃないですか!
昭和30年代の電蓄の電源部分と言われても、そうかと納得してしまいそうなレトロな雰囲気。
この電源れっきとしたMade In Japnでしたが、製造した会社、潰れずに今でもあるんかいなと思ってちょっとTOKINで検索かけたら、NEC/TOKINに変わって今でも健在のようです。さすがに電源ユニットからは手を引いているようですが。
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次はBX3/U2。10万を切る低価格機はAssembled In Hong Kongでした。Made In Hong Kongと表示しないのは「国民機」たる98の屈折したプライドでしょうか?
話脱線しますが、何でもPC-98シリーズを「国民機」と最初に言ったのは、Epsonなんだそうです。
じゃなかった。
エプソンが、「国民機」なんだそうです。
エプソンがきゅうはち互換機を出すときに広告で、エプソン・マシーンを「国民機」と呼んだんだそうです。
ですから、正しくはエプソンの互換機を国民機と呼ぶのが正しく、きゅうはちを国民機と呼ぶのは誤りなんだって。
「PC-98のソフトや周辺機器をNECよりお安いお値段で使えるようにするエプソン機こそ、日本の国民機」ということなんでしょう。ま〜今となってはトリビアにもならないトリビアです。
ま、PC-98シリーズは、「国民機Epson」と戦い、さらには、DOS/Vで日本語化を果たしたPC/AT互換機と戦います。しかしDOSの時代は、漢字ROM内臓のおかげでAT互換機に対しては処理速度の点で優位に立つことができていました。
けどWindowsになると、日本語表示に関しての技術的な優位はなくなります。それに加えて、DOS時代の強力な武器になった「PC-98で動くソフトの豊富さ」も、Windowsしか使わないのなら意味をなくします。(それにDOSのソフトでも「一太郎」、データベースの「桐」など主要ソフトはDOS/V版もありました)
前のBX/U2は1993年1月発売。その同年5月18日Windows3.1が発売されます。さらに同年10月18日、富士通がFMVを発売し、PC/AT互換機路線に大きく舵を切ります。
そして、1年以上の年月を経た1995年1月。
DOSの時代は終焉に向かい、世の流れが「Windows3.1が動くマシーン」になっていた時代に登場した低価格機は98,000円になりました。
ただし、この98,000円なりの低価格機ではWindows3.1は動きません。Memory1.6MB、ハードディスクなし、ビデオボードもなし、という構成ですから。
上位機種のPC-9801BX3/U2/Wという機種なら。メモリ5.6MB、210MBのハードディスク内蔵、ウィンドウアクセラレータ(ビデオボードのこと)Cバスに実装。Windows3.1インストール済みとなり、定価が、163,000円也。 そのお値段でもCD-ROMは内臓していないですぅ・・・。
なんとなく構造もシンプルです。分解もあっという間。Cバスの中に入っているのはグラフィック・アクセラレータです。元の持ち主は、Windows3.1プリインストールのお高いやつではなく、安い方を買い、ハードディスク、グラフィック・アクセラレータ、CD-ROMドライブを増設してWindows3.1をインストールしたと思われます。
CPUはカタログによるとi486 SX 33MHzのはずなんですが、DXが刺さってますね。元の持ち主が換装したのでしょうか。私かな?・・・・まったく記憶にないですが。
左が、BX、右がBX3のマザーボードです。
低価格化は電源ユニットにも現れていました。
上がIBMの電源、下がBX3の電源です。サイズも同じですし、ネジ位置も同じです。どちらも下の2隅綺麗に1本づつ、上は右のネジは下にずれ、左のネジは右にずれています。これは現在2007年になっても不動の規格です。
NECが日本用のコンセントをつけるという特注をして、安価なAT互換機用バーツを流用したのでしょう。
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予定時間が大幅に余ったのでもう一台。
それにしてもきちゃないなあ。写真映りもきたないんですが、マシンそのものもきちゃないんです。これは愛用とは言わないよなあ・・・。ハードオフで買ったのだけはたしかですが、いくらだったのか記憶ないです。1000円じゃ買えませんでした。
PC-9821 Xa10/K8 発売1995年5月 定価268,000円。
お値段は高くなっていますが、Pentium100MHz Memory8MB HD850MB CD-ROM実装済み。ビデオもオンボードでVRAM2MB。
これだけのスペックならWindows3.1ならびゅんびゅん動きます。けど、Windows95なら動くことは動きましたが、忍耐が必要です。まずまず動かすには130MHzぐらい、200MHzぐらいあれば、Windows98ぐらいまで、まずまずストレスなしで使えるでしょう。(メモリは8メガじゃ足らんですが)(あ、デジカメの画像処理は除く、です。)
さっきの、PC-9801 BX3/U2 1995年1月発売から4ヶ月しか経っていませんが、PCIバスが導入されています。RGBも98独自の形式からAT互換機と同じD-Subに変わっています。
そのD-Subの右、白い蓋がされいるRGB INはどう使うかというと、PCIにグラフィックボードを挿します。AT互換機ならそのグラボからディスプレイにつなぐのですが、グラボはAT互換機の流用ですので、当然のことながらPC-98のネイティブ画面(600×400)をサポートしておりません。ということで、PCIのグラフィックボードからの出力をRGB INに入れて本体のグラフィック機能と合体させるという仕様になっておりますです。かっこ悪いです。
蓋をあけたところです。HDはありません。あ、そうだ、こいつ久しぶりに電源入れたらHDがお釈迦になっていたんで、外したんだ、と思い出しました。
FDDがSony製です。
PC-98シリーズのFDは本来1.2Mのフォーマットですが、後期のPC-98は1.4Mが使えるばかりでなく、1.4MBのフォーマットでブートすることも出来ました。なんでもFDDドライブもAT互換機のFDDを流用したんだそうです。
(AT互換機用のFDで3モードなら何でもOKという訳ではないようですが)
Pentiumになっても100MHzぐらいならヒートシンクで十分だったんです。
VLSIのチップが使われていますね。VLSIはVery Large Scale Integration「とっても大きな規模の集積回路」って意味ですが、ここではVLSI Technologyという会社のことです。この会社のチップ、捨てる(1)のIBMのPS/Vでも使われていました。どんどんPC/AT互換機化していくPC-98です。
分解終了
ヒートシンクを外しました。一世を風靡したPentiumですね。IntelのCPUは386、486、と続いて586となるはずだったんだそうですが、どこぞの会社が586を商標登録してしまっていて、それで考え出したのがPentium、という話を聞いたことがあるんですが、どうもガセねたらしいです。
最近では、Blu-rayDisk。青色レーザを使うからこういうネーミングになったのでしょうが、それならBlue-rayだろう、何をかっこつけてBlu-ray、とか思っていたら、何でもBlue-rayなら「青色光線」という一般名称になるから、商標としては認められないんだそうです。それで「e」をとっちゃって、Blu-rayDisk。
苦肉の策だったんですね。一般名称のほかにも、「数字だけ」は商標として認められないんだそうです。それで普通、386とか数字だけで呼ぶことがおおいですが、商標としては、i386, i486。そこまではよかったんですが、その後、単純なアルファベット+数字も商標として認められないという判例がでたそうで、それでi586という商標が使えなくなった、というのがどうも正しいらしいです。
それで知恵を絞って考えた、Pentiumという名前が受けて、その後ず〜っとPentium。(pentは「5」って意味ですね。ペンタゴンの建物5角形。)
最近ついに、Core DuoとかCore 2 Duoとかやっと、Pentiumから離れて新鮮なネーミングになりました。そのせいかどうか、Intel絶好調。
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Macもそうですが、PC-9801もどんどんPC/AT互換機化していきます。新しい規格がどんどんPC互換機から出てくると、それを採用するほうが、価格競争の面でも性能競争の面でも有利ということでしょう。
PC-9801もディスプレイ端子がD-Subに代わり、PCIを採用し、USBを一部の機種で採用し(98では動きませんというUSBがあったそうな)、AGPを採用・・・する前に終焉を迎えました。
当たり前です。Windowsマシンとして勝負するのならPC-98のアーキテクチャを残すのは何の意味もない・・・・いや、負の意味を持ちます。
Macも、HDはスカジーからATAの規格のHDを使うようになり、ディスプレイ端子もD-Subに代わり、キーボード・マウスもUSBになり、グラフィックもATI製で、AGP。
どんどんPC互換機の規格を取り入れて、iMac miniなんか、キーボード、マウス、ディスプレイはPCのを流用していただければすぐ使えます。
そしてついに、CPUがIntel。Boot Campを使えばWindowsまでインストールできるまでにPC/AT互換機化が進みました。
そのうち、AppleがWindowsプリインストールのMacを発売しても私は驚きません。(どこぞのショップがもうWindowsをインストールしたMacを売り出してました)
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1995年11月23日、Windows95の登場。今から思えば、もう当時からNECは「いつPC-98をやめてPC/AT機に移るか」を考えていたような気がします。NECは海外向けにDOS/Vパソコンは作っていました。あとは「潮時」を待つだけです。
時代はPC/AT互換機以外のパソコンをどんどん駆逐していきます。NECも1997年10月23日にPC-98-NXシリーズで互換機路線に転じます。
当時の私の印象は「え?・・・決断速いな」でした。今にして思えば別に「決断」という大げさなものではなく、ただ「潮時」だと判断しただけでしょうね。その後もPC-98シリーズの新機種も多少は出ましたが、ついに2003年9月30日に受注終了。そのニュースを聞いたときは、「まだ売ってたの?」と思いました。
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PC-98は私の「初恋の相手」なんで、ついつい長くなりました。
NECがPC-98を作るのをやめても、いまだに98に対するニーズはあるみたいで、互換機が販売されています。もちろんEpsonではありません。
ロムウィンという会社の98Baseという製品です。工場などで工作機械の制御をPC-98でやっているところとかで一定の需要があるようです。