さ み だ れ 雑 記 | 18 | 1999年9月8日 |
暁テル子
ミネソタの卵売り (ビクターVICL-60338) |
二村定一だってもとはこの程度の軽い案内のつもりだったのでありますが、何か長編で、しかも自分に力がないためにちょちょ切れて、困ったもんだ。しかも大作のあとは気が抜けて更新が滞るし困りもんだなあ。
その点、暁テル子は楽でしょう。なぜって、手元に資料がない。CDの解説がほぼ唯一の私が持っている資料であります。
個人的には、リアルタイムでは聴いていません。生まれてないし、幼い頃懐メロで聴いた覚えもなく、年食ってから「再発見」した歌手です。そのうち、同様の「再発見組」のアーサ・キットにもにいつか触れようと思いますので、オールド・タイマーの人も若い骨董好きの人もお楽しみに。しょしょしょじょじ。(知らない人には意味不明)
さて、我らがテリーこと、暁テル子は松竹少女歌劇団の出身だそうである。なんでも「リンゴの唄」の並木路子もそうなんだそうである。笠置シズ子は大阪少女歌劇団で後に松竹歌劇団に移ったそうな。
昭和24年2月、ビクターからレコードデビュー。ということでCDが編年体なので、以下CDの曲順に軽い解説を・・・と書いていたが、あまし内容がないので、書き直し。
のっけから結論を言うと、「東京シューシャインボーイ」につきる。前にも私信で書いたことがあるが、この曲はただ陽気で楽しい唄じゃないです。
第一連で
僕の好きなあのお嬢さんと歌われたお嬢さんは、第三連では
今日はまだ来ないけど
きっと彼女は来てくれる
雨の降る日も 風の日も
僕の好きなあのお嬢さんと歌われる。結局、今日は来てくれないんですよね。「雨の降る日も 風の日も」くるはずの「お嬢さん」なんですが・・・。
今日は またどうしたの
きっと 明日は来てくれる
いつか二人で踊りましょ
作詞は井田誠一。作曲・編曲は佐野鋤。鋤は「たすく」と読み、戦前からジャズバンドで編曲などで活躍した人。編曲もかっこいい。
あとは、三木鶏郎作詞作曲編曲の「泣き笑いABC」がおすすめ。
Aは AIRPORT 羽田からという具合のABC数え歌。岡山市立幸町図書館にトリローの3枚組CDあります。おすすめ。この曲は始めて聴きましたが、トリローはセンスがいい。アレンジで、タイプライターを使ってます。ピンク・フロイドが「マネー」でキャシュレジスターのがっちゃがちゃ音を使ったのより20年ほど前ですよ、ってどういうたとえじゃ。
Bで BUMBUM 飛んでって
CのCITYはカリフォルニアで
DIAひろった 夢をみた泣いて笑って ABCD
わたしゃオフィスのタイピスト
あとは、いわずもがなの「ミネソタの卵売り」は当然収録されています。
ほかの収録曲と言えば・・・。
1曲目が、デビュー曲の、「南の恋歌」。ビクターに移った服部良一の、作詞・作曲・編曲。(CDにクレジットされている作詞の「村雨まさお」は服部のペンネーム)
暁テル子は、笠置フォロワーだと思っていたが、なんと、本家の服部良一の肝いりデビューだったとは。と言ってもこの曲はブギウギではなく、戦前の「南洋物」をビッグバンドで焼き直したような。2曲目も服部良一作詞・作曲・編曲。「これがブギウギ」。一部、キャブ・キャロウエイのまねします。あと、3曲目の「鬼のブギウギ」。までが「ブギウギ物」。可もなく不可もなくぐらいの出来です。
4曲目。昭和25年1月。「東京カチンカ娘」服部良一作詞・作曲・編曲。with羽山和男。解説には「パソ・ドブレ」とある。「パソ・ドブレ」って何?「カチンカ」って何?詳しい方がいらっしゃったら教えて下さい。「パソ・ドブレ」は、たしかキューバ系の音楽ジャンルの名前だったような・・。
これまでが服部良一時代。以後、作詞作曲者はばらばら。
5曲目。「りおのポポ売り」。「ポポ」は解説によると、果物だそう。ところで、
棕櫚の葉陰のオウムさえって歌詞。う〜。なんでブラジルでルンバなんだ! ブラジルって言ったらサンバだろうが常識的に。ボサノバもショーロもあるけど、何でルンバなんだ?
ルムバ歌うブラジルの夜
6曲目。「チューインガムは恋の味」
ガムガム ハリス 恋の味なんだって、むう。私は「ハリス」といえば、ちばてつやの「ハリスの旋風」を思い出してしまう世代なのだが、暁テル子もハリスだったのね(意味不明)。ところでハリスのチューインガムって今は無いですよね?
どんと飛んで、11曲目。「桃太郎ブギウギ」。私、桃太郎の本場の岡山在住ですが、地元でも知られていない曲です。面白いアレンジ。結果は失敗でしょうが・・・。
14曲目。「青空パラダイス」と題名はなっているが、歌詞では「やさぐれパラダイス」と歌われている。「やさぐれ」は今で言う「ホームレス」のことか?(詳しい人がいらっしゃったら教えて下さい。)
「星の流れに」に代表される「敗戦混乱期底辺もの」の一つ。「ガード下の靴磨き」も「東京シューシャインボーイ」もこの範疇に入るとおもうけど、これは、「ガード下の靴磨き」と「花笠道中」を足して二で割ったような曲調。って理解不能ですよね。でもこの2曲を連想してしまった。暁テル子の歌い方もどことなく中期の美空ひばりに近いような・・・。
可愛いあの娘は ルウジュを塗ってとあからさまなみに「売春婦」と分かる表現するのも珍しいのでは? わたし「銀座カンカン娘」もパンパン・ソングだと思うのだが、深読みでしょうか?
町に立ってる 夜咲く花さ
何のよごれた 体はいらぬ
イブは綺麗な 心意気
ああ やさぐれ やさぐれ
パラダイス
あと、日本に何人いるか知らないが、暁テル子マニアの為に、他のCD収録曲のご紹介。
ダイセルの「日本の流行歌史大系」に「祭りの夜のフラダンス」収録。(他にも「リオのポポ売り」「チューインガムは恋の味」収録。)
ビクターの「魅惑のニューリズム」(VICL-5308)に「びっくりしゃっくりマンボ」収録。
同じくビクターのCD6枚組灰田勝彦大全集(VICG-58022-7)に、当然灰田とのデュエットで「君と行くアメリカ航路」「乾杯!南海ホークス」の2曲収録。
私が知っているのはこれだけです。情報お持ちの方はよろしければお知らせ下さい。ではでは。